マネーゲームに流されるオバマ政権? ガイトナー・サマーズ企画について
金融危機の対策においては、オバマ大統領はガイトナー財務長官とサマーズ経済会議委員長に頼っている。ガイトナー氏とサマーズ氏にどこまで期待できるのであろうか。
ガイトナー氏とサマーズ氏は逆にマネーゲームを復活させようとしているようである。両氏に提案されているベールアウト企画は、複雑な仕組みで銀行・投機家・ファンドマネージャーに巨額なお金を渡してしまう。著名な経済学者は下記のように分析している。
ノーベル賞受賞者のポール・クルグマンの説明はここにある。小生なりに言い換えれば、こういうことである。政府は民間投資ファンドと組んで銀行から不良証券を購入する。不良証券を買うための資金は、民間の直接投資(7.5%)、政府の直接投資(7.5%)、政府の間接融資(85%)からなる。そこで、不良証券の価値が上がった場合、利益が直接投資のリターンになり、間接融資が全額返される。逆に不良証券の価値が下がった場合、損益が直接投資から引かれ、ファンドが損する。損益が直接投資の額を上回った場合、政府からの間接融資は「ノン・リーコース」であるため、上回った分が間接融資から引かれる。
上記の仕組みだと、結果的にファンドと銀行が儲かり、政府が損する。なぜなら数字でみよう。ある不良証券があると仮定する。この不良証券は確かめられない事情や経済の今後の動向などに影響されるので、価値が不確実である。50%の確立で50ドルの価値があり、50%の確立で150ドルの価値があると仮定しよう。平均では100ドルの価値に期待できる。ファンドが政府と組んでこの不良証券を100ドルで銀行から購入する。購入価格の85%は政府からの間接融資で、残りは政府(7.5%)とファンド(7.5%)の直接投資である。つまり民間投資家は7.5ドルの自己資金を投資し、残りは公的資金である。不良証券は実際に50ドルの価値しかない場合、民間投資家は投資した7.5ドルを全て失い、政府は42.5ドルを失う。150ドルの価値がある場合、ファンドも政府も25ドル儲かる。民間投資家からみて、50%の確立で7.5ドルの損益、50%の確立で25ドルの利益になるので、平均で8.75ドルの利益が期待できる。逆に政府は8.75ドルの損益が期待できる。要するに政府が間接融資でお金をファンドに流す。当然ながら、競売だと購入価格がより高くなるので、利益は銀行とファンドとで分けられるが、基本的なロジックは変わらない。
説明が長くなったが、結論としてはマネーゲームの起こした問題を新しいマネーゲームで解決する、という妙な企画である。しかも、この仕組みでは危険でない銀行でも不良証券を高く売却し儲かることができるので、問題の深刻さに関係なく公的資金を広くばらまいてしまうという点も懸念すべきであろう。
尚、このベールアウトはもっと恐ろしい側面がある。コロンビア大学のジェフリー・サックス教授は、「ガイトナー・サマーズ企画は我々が思った以上に悪いのだ」という記事で、銀行が新しいマネーゲームで公的資金を盗み取ることができるかも知れないという可能性を示している。こういう仕組みが考えられる。銀行は政府と組んで上記のような投資ファンドを作って、そのファンドで自社の不良証券を額面価格で購入する。そうすると、どの銀行でもこうしたファンドを経由して価値のない不良証券を額面価格で売却し、不良証券の損益の92.5%を政府に負わせることができるというとんでもない詐欺が起こる可能性がある。クルグマン教授も、サックス教授の記事にリンクして、この可能性を真剣に考える必要があるといっている。
マネーゲームがアメリカ経済を崩壊させているのに、「チェンジ」を唱えてきたオバマ大統領はなぜ未だにマネーゲームを支える政策を提案するのか?サマーズ氏は過去一年間でマネーゲームの主役とも言える巨大なヘッジファンドに勤め、5億円を超える報酬を受取った事実が4月5日に明確になった。