アメリカの失われた10年 先進国はどうすれば発展できるのか
1990年代は日本の「失われた10年」とよく言われますが、最近出た統計で言えば直近10年はアメリカの失われた10年だったかも知れません。まずは雇用は10年で増えていません。下記の図表は週刊誌ビジネス・ウィークのチーフ・エコノミストのマイケル・マンデルのブログからですが、民間雇用の10年間の成長率を示しています。1950年以来、不況が起きたとしても、10年間で見れば雇用は成長していたものの、今回の不況では10年間の雇用成長率が初めてゼロを下回っています。1999年〜2009年のこの10年で、民間雇用は増えていません。
給与動向を分析しても同様な結果です。世帯あたりの実質メディアン給与(給与の中央値、インフレ調整済み)は10年で約2%下がっています。政府から出ている時系列データは下記の通りです。
日本とアメリカのような成熟で豊かな社会においては、経済成長は困難になってきているようです。組織論の観点から考えると驚くべき事情ではありません。成熟した組織は進化する力を失うことがむしろ自然な結末です。進化できない組織は環境の変化に適応できなくなって次第に衰退していきます。
経済成長を復活させることは可能でしょうか。また組織論の観点から考えてみると、組織においては発展能力を取り戻すことは非常に難しいですが、不可能ではありません。ブラドリー・スタッツ、マイケル・タッシュマン、デビッド・アプトンと一緒に、この課題を研究しています。結論から言うと、試行錯誤と実験が鍵だと考えています。組織に関して言えば、従来のやり方を意図的に壊して、そして新しいアイディアを探すことは、発展能力の基本です。これは「意図的パーターベーション」と名付けています。
その発想を経済全体に当てはめてみると、経済の更なる発展のためには、今あるものを意図的に壊して、社会を不安定にさせる必要があるかも知れません。これはシュンペーターの「創造的破壊」に似ているでしょう。しかし、私どもの研究では、壊し方の賢さに焦点をおいています。従来の制度を壊すと当然ながらコストが生じます。壊したことによって、コストを上回るベネフィットが得られなければいくら創造的破壊と言っても組織は衰退します。そこで、論文ではトヨタを事例にしていますが、従来のものを壊す時に、どこで壊すか、どのように壊すか、どこまで壊すか、という条件を真剣に考えます。ただ単に壊すために壊すのではなく、新しい学びを生む「実験」の形で「賢く壊す」ことによって進化します。

