金融寡頭制のアメリカ

2009年 4月 9日

国際通貨基金(IMF)元チーフエコノミスト、マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院教授のサイモン・ジョンソン先生はアメリカが一種の金融寡頭制であると書いている。1980年代以降の金融業利益の急上昇、国の権力者が金融業と政府を行き来すること、金融業を優遇する政策などに焦点をおいている。ベールアウトは不透明な仕組みで公的資金を金融業に流していることも強調している。駄目な銀行を速やかに国有化した上で、金融業の影響力を抑えるために巨大な銀行を分散させる必要があると提言している。

マネーゲームに流されるオバマ政権? ガイトナー・サマーズ企画について

2009年 4月 7日

金融危機の対策においては、オバマ大統領はガイトナー財務長官とサマーズ経済会議委員長に頼っている。ガイトナー氏とサマーズ氏にどこまで期待できるのであろうか。

ガイトナー氏とサマーズ氏は逆にマネーゲームを復活させようとしているようである。両氏に提案されているベールアウト企画は、複雑な仕組みで銀行・投機家・ファンドマネージャーに巨額なお金を渡してしまう。著名な経済学者は下記のように分析している。

ノーベル賞受賞者のポール・クルグマンの説明はここにある。小生なりに言い換えれば、こういうことである。政府は民間投資ファンドと組んで銀行から不良証券を購入する。不良証券を買うための資金は、民間の直接投資(7.5%)、政府の直接投資(7.5%)、政府の間接融資(85%)からなる。そこで、不良証券の価値が上がった場合、利益が直接投資のリターンになり、間接融資が全額返される。逆に不良証券の価値が下がった場合、損益が直接投資から引かれ、ファンドが損する。損益が直接投資の額を上回った場合、政府からの間接融資は「ノン・リーコース」であるため、上回った分が間接融資から引かれる。

上記の仕組みだと、結果的にファンドと銀行が儲かり、政府が損する。なぜなら数字でみよう。ある不良証券があると仮定する。この不良証券は確かめられない事情や経済の今後の動向などに影響されるので、価値が不確実である。50%の確立で50ドルの価値があり、50%の確立で150ドルの価値があると仮定しよう。平均では100ドルの価値に期待できる。ファンドが政府と組んでこの不良証券を100ドルで銀行から購入する。購入価格の85%は政府からの間接融資で、残りは政府(7.5%)とファンド(7.5%)の直接投資である。つまり民間投資家は7.5ドルの自己資金を投資し、残りは公的資金である。不良証券は実際に50ドルの価値しかない場合、民間投資家は投資した7.5ドルを全て失い、政府は42.5ドルを失う。150ドルの価値がある場合、ファンドも政府も25ドル儲かる。民間投資家からみて、50%の確立で7.5ドルの損益、50%の確立で25ドルの利益になるので、平均で8.75ドルの利益が期待できる。逆に政府は8.75ドルの損益が期待できる。要するに政府が間接融資でお金をファンドに流す。当然ながら、競売だと購入価格がより高くなるので、利益は銀行とファンドとで分けられるが、基本的なロジックは変わらない。

説明が長くなったが、結論としてはマネーゲームの起こした問題を新しいマネーゲームで解決する、という妙な企画である。しかも、この仕組みでは危険でない銀行でも不良証券を高く売却し儲かることができるので、問題の深刻さに関係なく公的資金を広くばらまいてしまうという点も懸念すべきであろう。

尚、このベールアウトはもっと恐ろしい側面がある。コロンビア大学のジェフリー・サックス教授は、「ガイトナー・サマーズ企画は我々が思った以上に悪いのだ」という記事で、銀行が新しいマネーゲームで公的資金を盗み取ることができるかも知れないという可能性を示している。こういう仕組みが考えられる。銀行は政府と組んで上記のような投資ファンドを作って、そのファンドで自社の不良証券を額面価格で購入する。そうすると、どの銀行でもこうしたファンドを経由して価値のない不良証券を額面価格で売却し、不良証券の損益の92.5%を政府に負わせることができるというとんでもない詐欺が起こる可能性がある。クルグマン教授も、サックス教授の記事にリンクして、この可能性を真剣に考える必要があるといっている

マネーゲームがアメリカ経済を崩壊させているのに、「チェンジ」を唱えてきたオバマ大統領はなぜ未だにマネーゲームを支える政策を提案するのか?サマーズ氏は過去一年間でマネーゲームの主役とも言える巨大なヘッジファンドに勤め、5億円を超える報酬を受取った事実が4月5日に明確になった。

第二大恐慌?

2009年 4月 6日

現在の不景気がどこまで深刻かということに関して、二人の経済学者が面白い分析を出している。工業生産、世界貿易量、世界株式市場の動向を比較し、どれをみても現在の不況が1929年に始まった大恐慌より悪いという結論をデータで示している。

公益資本主義の説明資料

2009年 3月 26日

アライアンス・フォーラム財団主催のITあわじ会議で発表した資料は東京財団のホームページからダウンロード出来る。

未だにマネー・ゲームが儲かる

2009年 3月 24日

アメリカ経済の深刻な問題の一つは、実業より金融業が儲かることにある。当然ながら金融業は経済において不可欠であるが、人間が使えるものは何も生産しない。工場に例えて言えば金融業は間接部門に当たるであろう。従って、金融業が膨らむのは決して望ましくない。尚、法人利益に占める割合で見ると第二次世界大戦以降はアメリカの金融業が膨らむ一方である。優秀な人材も多く吸収している。もっとも儲かるのはヘッジ・ファンド・マネジャーというプロの投機家である。金融危機の影響でファンド・マネジャーの儲けが落ちてはいるが、ニュー・ヨーク・タイムズによると未だに巨大な利益を得ている。2008年の上位三人の個人利益が下記の通りだそうです。1ドル=100円で計算。

James H. Simons $2.5 billion (2500億円)
John A. Paulson $2 billion (2000億円)
George Soros $1.1 billion (1100億円)

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アメリカ流資本主義はなぜ滅びた?

2009年 3月 23日

3月11日にアライアンス・フォーラム財団主催のITあわじ会議にて公益資本主義の研究について講演した。この研究は東京財団アライアンス・フォーラム財団の共同研究プロジェクトとして去年の九月から始まり、六人のチームで進めている。今年中に研究の報告をしますが、淡路島で発表した内容を極簡単にご紹介する。

講演のタイトルは「アメリカ流資本主義はなぜ滅びた?新しい『公益資本主義』の必要性」であった。1970年代以降のアメリカ流資本主義は二つの特徴がある。先ず、自由市場で全ての社会問題が解決できるという「市場万能主義」。次に、会社を株主の所有物とし、経営者の役割を株主価値の最大化とする「株主至上主義」。この二つのイデオロギーは理論上でも深刻な問題を抱えており、実際には所得格差、短期志向と過少投資、ソーシャル・キャピタルの崩壊という弊害をもたらす。日本でも同様な問題が出始めている。

上記の問題を乗り越えるために、資本主義の再設計が必要である。「公益資本主義」と名付けているのは資本主義の一種で、持続可能性・公平性・改良改善という公益に必要不可欠な要素に焦点をおく。

淡路夢舞台にて講演

淡路夢舞台にて講演

日本経済新聞の紹介記事

2009年 2月 5日

「米国流資本主義に疑問、日本で『公益』研究」という記事で、東京財団とアライアンスフォーラム財団と共同で行っている公益資本主義研究の紹介があった。

「米国の問題点は経営者の短期思考や信頼関係の軽視」と指摘する。目先の利益のため必要以上に人員や投資を削る風潮は長期の競争力をそぐし、社員のやる気も損なう。公益資本主義は社員や取引先など幅広い関係者との信頼関係を重視し、長い目で起業価値を高める道を探る。(日本経済新聞夕刊 2009年1月27日 5面)

市場原理では社会問題が全て自動的に解決されるわけではない。ダグラス・ノース教授の言うとおり、市場原理が良い結果をもたらすかどうかは、市場を規制する制度の設計次第である。どのような制度を作れば公益を果す企業が育つのか、というのは公益資本主義研究の主な論点である。

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